2007年07月17日

まちがいだらけの成果主義

会社に長くいればよいのだろうか

成果主義になったのでサービス残業や長時間労働になったということが最近話題になっていますが、いわゆる職務別給与とか裁量労働制といった新しい概念が誤解されているのではないかという疑念を持たざるを得ません。 
ずいぶん昔の話になりますが “働きやすい会社” の一位になった会社は残業がゼロでした。 たまたま知人がいましたので聞いてみましたら、確かに残業は無いです、とうよりも残業をやらせてもらえないところなので大変です、とても働きやすい会社のイメージとはかけ離れています、ということでした。 つまり一日に出来ること、またもっと長期の仕事でも今日何が終わればよいのかを自分で計画しそれを実行するというやり方が組織全体にゆきわたっているので、残業をしない、残業が出来ないことになるとのことです。 残業をするのは自分が自分に課した仕事を終了できなかったことを意味しますので、残業代は出ないし、一定時間が来ると電気も消えてしまうとのことです。 
このように、各個人に任された業務が明確であれば毎日でも毎週でもそれぞれの区切りまでに仕事が完了すればよいわけで、まさに裁量労働になると思います。 では、何故問題になるのでしょうか。


労働対価の基本は時間ではなく業務の結果

いままで、ほとんどの職種で労働の対価は時間によって支払われてきました。 野球選手のように成績によって決まるのはごく稀なケースです。  一方で、その時間で何をやるかというのが意外に不明確、不明瞭なままなのではないでしょうか。  “いつまでに何をどの程度完成させる” という基準が不明確なので、翌日にやってもよい仕事をやることで、一生懸命仕事をしていますという証にしています。 極端に言えば一番能率の低い人に合わせて仕事をすることになり、効率よく仕事の出来る人の “単位時間当たり労働価値” は低くなってしまいます。 これが日本企業の生産性を低くしているのではないでしょうか。

グローバル化のみが解答ではない

さて、このように経済活動には国境を越えてグローバルに共通な部分とその国や地域に密接に結びついた部分がありますので、すべてをひとくくりにして議論することはできません。 いわゆる経営論と称するものや戦略と称するものにはこの差異を無視してあたかも全世界が同一であるかのごとき議論、あるいは全世界が同一とならなければならないという議論がありますが、やはり最終的にはそれぞれの社会状態にあったかたちに修正を加えて初めて成果が現れるのではないかと思います。 いってみればこれも競争のひとつで、理論化された戦略をいかに速くしかも適切なかたちで自らの組織に導入できるかということになります。 このためにはそれぞれの組織においては何が自分達の特徴であり長所であるのかという明確な認識ができていることが必要です。 

貢献を求めるには基準が必要

生産ラインのように外部の要素によって仕事が定められる職場では、集団としての効率が生産量や不良率といった明確な要素で判定されるので、共同作業や相互協力、協調性といった日本人が得意とする特性を生かし、生産性は大変高くなっています。  残念ながら個人で行なう仕事の生産性はそれほど高くないというのが実情ではないでしょうか。
つまり、同じ人間でありながらある環境では高い生産性を発揮し、別の環境では生産性が低いというのは個人の問題であるより、仕事の仕組みの問題、つまり仕事の与え方の問題に思えます。  これらを変革しないままの成果主義導入は、長時間労働や、不公平感から来るモチベーションの低下やコミュニケーションの低下を招き、結果的に生産性の向上は実現しないことになります。 

今日、今月、今年やるべきことが明確になっているか?

グローバルなビジネス環境においては競争に負けないようにもっとも簡便な方法、つまり労働者にしわ寄せをすることで勝ち残ろうとしますが、長期的には却って競争力の低下は避けられません。 やはり目指すは単位時間当たり労働価値を高めるということであり、そのためには企業が目標設定の明確化に工夫する必要があります。

日本的経営の誤解

戦後の日本の企業社会を特徴付けるものとして、年功序列、終身雇用ということがあり “日本的経営” とも呼ばれてきました。 しかし、本当にそうなのでしょうか。 確かに結果的に年令の序列でもあり、定年まで同一企業ということが多かったのですが、少なくとも日本固有の制度ではなく、戦後の復興経済から高度成長に至る特異な社会の中で現れた現象であり、しかも大企業において真であったということは忘れてはなりません。   高い経済成長率と慢性的な人材不足という時代においては、個々人に対する個別の評価より、集団としてどれだけの成果を達成したかが、次の飛躍には重要でした。  したがって、集団として成果を分け合うという風土が出来てきますし、差異をつけるにしてももっとも納得性のある方法が最適となります。 年令や組織内での在籍年数は明確ですし、決して逆転することがありませんので、全員が納得せざるを得ない要件ということで定着しました。

これからの日本的経営

これからの安定成長期においては組織が拡大しないので、全員に一定以上のポジションを保証することはできませんし、 “今” の失敗は “将来の成功” で置き換えるにはあまりにも代償が大きすぎ、どうしても今の結果に焦点を当てざるを得ません。  このような状況下では年令や在籍年数といった絶対的な指標でなく、結果を相対的に評価する尺度が必要になりますが、相対的であるだけに組織内のメンバーに対する納得性の確保が大きな課題となります。  これらが解決されて始めて “成果主義” が定着することになります。 前提となる “どんな仕事の結果がいつまでに求められているのか” の明示が非常に重要ですし、これらが出来れば、短期的な外部からの応援も可能です。 極端な話、言葉のわからない外国人でも仕事が出来るかもしれません。 このような変化に各企業は対応できているのでしょうか。 業務の設計、明確な目標、結果を計測する指標、そしてマニュアルの整備が必要となりますし、更に環境の変化に絶えず対応できるようなモニタリングと柔軟な変更を可能にする組織運営力がマネジメントに求められます。