農業国アメリカ
開発途上国の問題の多くは産業を第一次産品に頼っていることです
市場での競争力や流通の力関係でどうしても不利な立場に陥り、しかも価格変動に
左右されてしまいます
唯一の例外がOPECという強力な組織と1970年代の衝撃的な石油戦略でセブン
シスターズ(国際石油大手)から価格決定の主導権を取り戻した石油産業です
ここでアメリカの産業を見て見ましょう
米中貿易対話でも明確ですがアメリカの主要輸出品は大豆や牛肉を始めとする
農産物で逆に輸入品は工業製品です。
一方で石油に関してはシェールオイルによってOPECに対する対抗策を持ち、今や
世界最大の産油国でもあり輸出余力もありますが、資源という面で見ればやはり
第一次産業なのです
農業を始めとした第一次産業への過度で短期的な依存は長期的な国力の低下を招き
かねません
今回突然発表された自動車に対する高率関税を見ても、長期的には国内自動車産業
保護というより技術力の低下、ひいては競争力の低下を招くことになり、かつて
経験した鉄鋼や家電の二の舞となります
大きな国内市場を持つ米国企業は輸出に対するインセンティブが高くありません
国内で利益が上げられれば十分ということもあって、海外で多様なニーズに対応
しながら競争するという発想が少なく、一たび輸入品との競争にさらされると
価格、品質、機能面で弱さをさらけ出し、収益力が低下するとプロ経営者の
判断で技術への投資をするよりも市場から撤退して資本を他の収益力の高い分野に
向けてしまいます
1950、60年代に競争力の低下と石炭や鉄鋼産業の衰退で苦しんだ英国は、金融と
音楽を始めとする芸術産業に活路を求め、自由貿易を保持することで低い食料
自給率を補っています
同様に低い食料自給率国である日本は大きな戦略として自由貿易によるエネルギーと
食料の確保が重要で、この点でアメリカとは基本戦略が異なります
日米関係は重要ですが、地政学の観点も踏まえ、中国の台頭という現実を見極め
もっと大きな戦略に基づいた日本の行動が求められます