品質保証と身分制組織
今時、身分制組織とは?と訝る方もいらっしゃるかもしれませんが、残念ながら
実質的な身分制組織は残っています
少し前のことになりますが、某大手基幹産業のトップの方との対話で次のような
ことがありました
某トップ:『先日、現場の人たちと話す機会があってとても良かった』
私:『どのような話をされたのですか?』
某トップ:『現場に行って従業員の代表者たちとビールを飲みながら話ができた』
私:『それは良かったでしたね』
某トップ:『事業所に依頼して20名ぐらいの人たちと事務所内の会議室で
いろいろ話が聞けました』
詳細の会話は省きますが、要するに3交代1,000人以上の事業所で代表者20名と
工場入り口近くの事務所で会合を持ったものの、本当の現場には行っていないし、
ランダムな人選ではなく会社側でお膳立てした人と話をしたということでした
それでも、これまでは経営トップが現場の事業所に行ったり直接話をすることは
なかったので画期的な出来事と言えるのです
さて、このような組織では都合の悪い品質上の課題が報告されることはないでしょう
報告がなかったというのは釈明会見等でよく聞かれる言葉ですが、情報は待って
いても上がってきません。取りに行かなくてはならないのです
品質管理は地味で根気のいる仕事ですが、異常値の発見は比較的容易にできます
問題はその後の対処にあります
直接上司が適正な判断をしていれば情報は伝達されるのですが、時として報告ルート
の上位者が顧客の真の要望と使用状況を把握しないまま適否の判断をして組織内の
波風を消してしまうことがあります
上の例に挙げたような風通しの組織では課題は膨大な情報の中に埋没し、表面化
しない可能性が高くなりますが、上司が情報を取りに来るような組織では課題を
埋没させるのは困難で、必然的に早めに上位責任者に情報が伝わり適切に処理
されるのです
残念ながらこのような体質の会社がまだ多いと言わざるを得ません