コミュニケーションとは
やや旧聞になりますがみずほ銀行や三菱重工などで検査やシステムでの
問題について管理体制の甘さが指摘され、一方でそれら企業のトップからは
コミュニケーションをとっていたが十分な情報把握ができていなかったと
いうコメントが伝えられています
ずいぶん昔のことですが筆者がとある超大企業の常務さんと話をしたことが
思い出されます
この方は誰もが知る鉄鋼メーカーの常務さんですがある会合で人事の話になり
『最近は現場で社員の話を聞くようにしていて様々な情報が聞けてとても
良い体験です』と言われました
なるほど、このような重厚長大企業でも役員が現場に出かけ社員とビールを
飲みながら情報交換するようになったのだと感心したのですが、もう少し
話を聞いてみると少し様子が違ったようです
ご存知のように製鉄所は広大な敷地があり入り口から溶鉱炉のある場所まで
自転車で走らなければ行かれないような配置なので『どこで会合を持った
のですか』と聞いたところ『管理棟内の会議室に来てもらって話を聞いた』
とのことでした
つまり現場の責任者が『適任者を選別し、セレモニー的な会合を持った』
ということになりますので、筆者自身が勤務していた会社の同様な会合とは
異質なもので、とても現場従業員の本音が聞けたという状況ではないことは
明らかです
上記のコミュニケーションをとっていたというのもここに挙げた例と同じ様な
ものだったのでしょう
文化人類学者のエドワード・ホールが指摘したように日本はメッセージの
受け手にその真意を推察させる「ハイコンテクスト」な国だと論じたように
トップが求めることを斟酌し忖度することは日本の良さでもあり、また真実
が表面化しない悪い点でもあります
鎖国時代ならいざしれず複雑な現代の国際社会で存在感を示すためには
自国内だけで通じる知恵のみでは存在感のない国になってしまいます