世論調査の怪
やや旧聞になりますが毎年憲法記念日に合わせて世論調査が行われます
時節柄憲法改正についての世論調査ですが結果はともかくとして設問そのもの
に疑問があります
曰く「憲法改正に賛成ですか、反対ですか」
これは一般論であって憲法改正に反対すると言うことは現行憲法を未来永劫
維持すると言うことになってしまい世の中の変化が激しい時代にこんなことが
あるでしょうか
つまりこの世論調査は結局何も聞いていないかあるいは言外に憲法第9条の
改正に賛成ですか、反対ですかと聞いているのかもしれません
いずれにしても複雑な状況を簡単に結論のみに集約することはリスクでも
あります
そもそも改憲論議というのは
- 現憲法のどの部分がどのように問題なのか
- それに対してどのようなアプローチがあるのか
- 更に具体的にどの条文をどのように変えるのか或いは補足するのか
- そのことによって何が解消されどのような影響が予見されるのか
- この改正によって憲法全体の理念がどのようになるのか
このようなことが具体的に提示され各レベルでの議論がなされ十分に理解
された上で初めて改憲の手続きに進めるものです
そしてこれらの議論が行われる前に改憲の手続き特に国民投票の手続きが明示
される必要があります
現状では一括投票なのか条文ごとの投票なのかさえ不明です
改憲の発議があってから国民投票手続きを決めるのではなく改憲投票と同じ
程度に十分な議論と理解をもって全体像を明確にしたのちに初めて具体的な
条文審理に入るべきでしょう
このように考えると冒頭の世論調査は何を聞きたいのかが不明確です
メディアがこの程度の理解力で世論調査を実施し、センセーショナルに記事を
書くことに大変疑問を感じるとともに日本の知識階級の理解度はこの程度で
しかないのは悲しいことです
終戦後、GHQが日本人の精神レベルは小学校3年生程度と言っていましたが
残念ながら的を得たことなのかもしれません