“明日は何を新しく始めますか?”
これができれば目標管理は間違いなく成功する

成果主義は終わったのか?

数 年前から具体的な数値による目標管理が“成果主義”という名のもとに、人事評価の流行になりましたが、金融危機を発端とする景気減速のなかでようやく見直 し議論が活発になってきています。 目標管理制度による組織活性化、生産性の向上ということが謳い文句でしたが、残念ながら結果として十分その成果を発揮 することなく見直しへと再び舵を切ることになりました。 それは期待に反して予想された成果を上げることができず、却って

1.上司/部下、同僚間の対話が無くなった

2.ノウハウの移転が行なわれない

3.生産性の向上が期待したほど認められない

4.非正規社員の増加による社員構成の歪が生じた

5.売上、利益低下のなかで極端な賃金の低下という社会現象が起きた

ということが表面化し、いわゆる目標管理制度や成果主義は破綻したという認識が広まってきたからです。

もっ とも期待された成果の隠れた部分に、『組織活性化=若手の登用(高齢者の削減)』『生産性の向上=業務見直しを伴わない単なる人員削減』ということがあ り、人員削減が一定程度まで達成されたので表向きの理由であった成果主義の看板を下ろせるようになったということなのかもしれません。 

本来の成果主義

さて、いずれの理由にせよ本当に成果主義は破綻したのでしょうか?

筆 者はそう思いません。 成果主義が破綻したのではなく“表面的な目標管理に基づく成果主義”が破綻したと思います。 もう少し厳しい表現をすれば“本当の 成果主義は導入されなかった”ということであり“ニーズに即した真の成果主義”を導入すれば必ず成果は上がりますし、組織力の強化、正規/非正規に拘わら ず社員モラルの向上も同時に達成できるのです。 その結果として会社業績も向上し、個々の構成メンバーの報酬も増加します。

数年前に“成果主義”が導入された時の謳い文句と同じではないかという疑念をいだく方が多いと思いますが、下記の簡単なサマリーをご覧ください。 内容が随分異なることにお気づきになりませんか? そうです。言葉は同じでも内容が全然違うからです。

目標の立てかた

1.“成果”とは“どれだけ”ではなく“何を、いつまで”ということです

2.   つまり成果に至る道筋を目標とするということです、いわゆる5W1Hを明確にすることです

3.  目標設定段階で上司は“成果”と“何を、いつまで”の関係が正当であることを評価しなくてはなりません

4.  上司は成果に至る道筋を知っている必要があり、コーチングによってそのノウハウを伝えることが重要です

5.“何を、いつまで”が達成されても“成果”がついてこないのは計画が悪かったか、偶発的な理由のためかいずれかですから、これらの評価も大切です

6. “何を、いつまで”であれば、数値目標の無い間接部門にも簡単に導入できます

順文和準備と継続性

こ のように計画設定には内容の十分な理解、その前に十分な準備が必要なことがわかります、また評価も冷静な分析が必要ですから、導入はそれほど簡単ではあり ませんし、上司の経験、知識、コミュニケーションスキルが求められ、これらのマネジメントスキルを有する人が有資格者であり、単に経験年数のみがステップ アップの要件ではなくなりますので、ここでも成果主義(実力主義)が適用されることになります。  このように関係者全員の十分な理解と現状把握、本人/ 上司ともに十分な準備が必要になり、一定期間のトレーニングによる考え方の理解も必要になります。 単に売上等の数字を数値目標とするのであれば簡単に導 入できますが、これでは予定された実績の向上は見られません。 簡単に導入できて実績の上がる仕組みは無いということを認識すべきでしょう。 人間の考え 方が本当に変化するのに3年はかかりますし、それこそ、『やってみせ、いって聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ』(山本五十六)ということです。

管理者にとって厳しい制度

ま た、このような目標設定を上から下まで浸透させることで、組織全体の事業計画と個人の目標設定を連動させることができますので、組織全体の計画に無理があ れば個人の成果も達成できないということも明白になります。 さらに組織として求めている人材は何かということも明瞭で、単に“優秀”な人材を集めること ではなく、それぞれの段階で必要な“仕事の目標を達成できる”人材を求めていることがわかります。 求められるスキルは年齢や経験によって自然に醸成する わけではないので、それぞれのポジションで求められる人材は“何を、いつまで”ということを達成できるスキルを持つ人であり、人材育成の目標もこれらのス キルの醸成ということになります。  これが本当の実力主義であり、正規/非正規とか在籍年数や学歴が最も重要な要素になるわけではないことが理解できる と思います。 人に組織を当てはめるのではなく、組織に人を当てはめるという発想で、経営者にとっては組織の設計とそれぞれの果たす役割を明確にすること が求められ、よく言われてきた“お神輿経営”からの脱却が求められます。 本当の成果主義は経営者、管理者に厳しい制度ということになります。

こうすればできる

苦境から、または不況から抜け出すのは簡単ではありません。 そして、経営者、従業員双方とも明確な方針、成果に至る道筋の確立という努力をすることで初めて目標が達成されますので、経営者の役割は一定の考え方を迷うことなく定着させることにあります。

(具体例)

Where:どこで          対象の限定:市場のセグメント、地域、本社経費、賃借料 etc

What:何を              具体的施策:(販売)新規顧客獲得、既存顧客の維持 etc

(管理) 費用削減、新規ポリシーの開発 etc

When:いつまで       時期の明確化:今年度中、3ヶ月以内、3年計画 etc

How:どうやって      具体的方法:過去の販売データ分析、時間配分の最適化、外部コンサルの利用

Who:誰が                他部門との連携:本人、本人の所属するチーム、部門

Why:どうして           論理的説明:気合、感覚ではない整然とした説明