政治とマーケティング
トランプ大統領については様々な評価が有りますが、ひとつだけ確実なのは政治に
マーケティング手法を導入した事です。 その善悪については人それぞれの考え方
があるでしょうが急激に変化する世界の中で政治だけが不変である理由はありません
2016年の大統領選挙のときからマーケティング手法を導入しており、その一例は
選挙制度を十分に理解した作戦だったと言う事です
一般投票での勝負は度外視し、州毎の選挙人をどのようにして積み上げるかという
かなり緻密な戦略が見て取れます。実際、一般投票では2%以上の差でクリントンが
勝利していますが選挙人では100人以上の差を付けられています
トランプ陣営の作戦は負けが必至のニューヨークやカリフォルニアではほとんど
選挙活動をせず、比較的選挙人が多く保守的な中西部の諸州を重点的に取り込んだ
ので一般投票では逆転現象が起きたのです
マーケイングの観点からは大成功ですが、争奪戦になった中西部諸州でいかにして
支持を得たのか、『アメリカ第一主義』『NAFTA見直しで職をアメリカに』『不法
移民を制限』といったスローガンで支持を集めましたが、本当にこのような政策を
実行しようとしていたのかどうか疑問な点もあります
マーケティングと政策の違いは投影しているタイムスパンだと思います
マーケティングは今の状況にどのように対処するのか、あるいは顧客の
デモグラフィック分布を把握したうえで最大の効果を生むような戦略を建てる
というのが基本的な考え方ですが、政策はもう少し長い時間軸でみています
5年とか、10年のスパンで考えますから『今』への対処よりも『理念や哲学』が
優先されることが多くなります
日本では政治の劣化が言われて久しく、選挙制度や政治家の質に話題が集中しがち
ですがマーケティング思考があるのかどうかという観点から見ることも出来ます
個別の政策には必ずしも賛成しないのに内閣支持率が高止まりしているという
世論調査結果をどのように解釈するのか
意外にも日本では知らず知らずのうちに政治の世界にマーケティング手法が導入
されていたという事かもしれません